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10年後の自分をイメージする [産婦人科医]

先々週、
日本産科婦人科遺伝診療学会、という学会に出席するために、
長崎に行ってきました。

昨年末に、人類遺伝学会に入会して、
臨床遺伝専門医の勉強中ですが、
なかなかの難易度で、取得には苦労しそうです。
それでも、自分のできる範囲で勉強して、
今の、これからの、自分の医療に活かしていきたいと考えています。

この長崎の学会では、
遺伝カウンセリング・ロールプレイ研修というものにも
参加してきました。
遺伝カウンセリングの実際的な演習として、
ロールプレイ方式で行います。
カウンセラー、患者、オブザーバーに分かれて、
順番にあらかじめ想定した役割で実習します。

これが、まあ、難しいことと言ったら。

カウンセラー役の順番で、
遺伝相談を受ける側として、つい心配かけたくないと思うあまり、
うまく安心できるように誘導しようとしてしまうわけです。

そうすると(わざとかも知れないですが)、
どんどん深みはまる、展開に陥っていきます。
あまりの難しさに、悲鳴を上げそうになりました。

結局、自分では全く納得のいくようなものにはなりませんでした。
そもそも、そういうことを自覚するために行う研修でもあります。
当たり前といえば、当たり前です。

ただ、そんな自分を、冷静に振り返ってみると、
つい、自分が自信のない分野で、患者さんと向かい合うときに、
自信のなさをなくすために、
「患者さんに心配かけない」という大義名分で、
実は、自分の都合のいいようなストーリー展開をしようとしていたことに
気づきました。

それは、カウンセリングとしての体をなしていなかったと反省しました。

ボクは、若い先生たちに言っている言葉があります。
それは、
「つねに、10年後の自分をイメージして、今、自分が何をすべきかを考える。」
ということです。

その言葉を自ら思い出して、
10年後には、きっと、今よりもっと安心して相談できる産婦人科医になろうと思いました。

そして、学会2日目の午後、
そろそろ夕方の飛行機の時間が気になりだした頃、
ボクはどうしても見ておきたい場所があって、
行くべきか、学会でギリギリまで勉強するか、悩みました。

それは、中学の修学旅行で訪ねた、大浦天主堂でした。
ざっと35年以上前に、その美しさに思わず震えた場所です。

長崎自体、20年ぶりです。
次来るときは、死んでるかも知れません。
そう思うと、学会場を抜け出して、タクシーを飛ばして、
ほんの15分ほどで到着しました。

大浦天主堂.jpg

35年以上経っても、なんにも変わっていませんでした。
中に入ると、ステンドグラスや、クラッシックな内装も全く昔のままでした。
じわっと目頭が熱くなりました。

10年後の自分をイメージして、常に進歩しようと目指している一方で、
時間の流れをまったく無視するかのような不変という安心感
ボクは、何を目指したらいいのだろうか。

想いは、何十年経っても、けっして変わらぬ普遍的なもので、
それを支える医療技術は、常に変化して、進歩していく。
そういうことなのだろうと
納得しました。

まだまだやらないといけないことが、たくさんあります。
そして、それは、きっと、ボク自身が幸せを感じることです。
これから歩こうとしている道は、
まっすぐではないかも知れないし、山あり谷ありかも知れないけれど、
きっと、たくさんの笑顔で満ちあふれているはずです。

ボクの笑顔で、また、たくさんの人を笑顔にしたい。

これが、ボクの10年後です。

すべての子どもたちと、
その子どもたちを愛する大人たちへ、
今年も
メリークリスマス


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ちばおハム

こんにちは、haruさん
今日は大みそか、産婦人科の先生にとって大みそかや正月もお産次第でしょうが、この年の瀬はいかがお過ごしなのでしょうか。

10年後の自分をイメージして、というのはお医者さんらしいなあと思いました。
専門性の高い医者の世界、10年スパンでないと技術の向上、人間性の成長、見こせませんよね。
最近、この10年という長いスパンで後輩を見ていくことにかけていたかな、と反省しました。
後輩たちが人生の次のステージに上がる時、職業をどう支えていくか、難しさを考えたこの1年だったので。

それではharuさん、よいお年を。

by ちばおハム (2015-12-31 06:40) 

かおりうむ

ハル先生、明けましておめでとうございます。
ご開業決定とのことで、そちらもおめでとうございます!色々な沢山の想いがあっての勇気あるご決断だったのではないでしょうか。
ハル先生のご開業されるところで診ていただけたらとても幸せだろうとつくづく思いました(*^^*)
先日まで、ドラマのコウノドリを見ていていつもこんなに患者想いの先生方や病院が本当にあるのだろうかと思いながら、ハル先生ならこんな感じなのだろうかとブログから見る先生像と重ねておりました。私も第二子に向けて初歩的な不妊治療を始め、ドラマを見てはひとつひとつの命の意味や在り方に毎回見ては泣いていましたが…。

話はそれましたが、変わらなければいけないモノに相反して変わらないモノに対する安心感、すごく共感します。
ふと上を見上げた時の空、秋のキンモクセイの香りなど、小さな頃に見たり嗅いだりしたモノとまったく同じ。自分はこんなにも大きくなって環境も変わっているのに何も変わっていないモノ。不思議だなぁと感じたことがあります。
ハル先生の言うように、変わっていかなければいけないモノと、変わってはいけないモノってあるのだと思いました。内面的な部分では特に。
by かおりうむ (2016-01-01 22:24) 

haru

ちばおハムさん、コメントありがとうございます。
返事が遅くなって、ごめんなさい。
一つの仕事を初めて、場所ができあがり、人が集まり、その人たちに自分の業(わざ)を教え、そして自分の仕事が広まっていく。
この一連の過程には、10年はかかるのだと思っています。
今回退職した病院に赴任したのは4年ほど前ですが、ようやく、場所が出来上がり始めた頃に、一緒に頑張っていたスタッフの転勤や家族の事情もあって、どちらかというと、「泣く泣く」スタイルを変えることを決心しました。
かといって、ボクが向かう方向性には、全くブレが生じていません。
ボクが生きている場所は、もはや、所属する病院ではなくて、地域であって、医会や医師会が仲間になっているように感じています。
病院を辞めたことで、より多くの仲間ができたのです。
まだまだ、ペースはつかめませんが、きっと来年の今頃は、忙しくて、また笑顔がなくなっているかもしれません。(笑)
by haru (2016-02-07 09:45) 

haru

かおりうむさん、コメントありがとうございます。
時が流れて、自分も年齢を重ねていくと、内面的な部分でも、変わっていくものと、いつまでも変わらないものがありますね。
自分がやっている仕事の内容が、時代とともに少しずつ変化していったとしても、自分が思い描いている、理想はいつまでの変わらず、きっといつか、自分のその理想に近づいていくものだと信じています。
ドラマ、コウノドリは、そういった産婦人科の理想をリアルに、そしてきれいに表現していると思います。
実際は、もっと多くの雑音があって、同じことを、大きな声で叫んだとしても、誰の耳にも届かないことがあります。
あのドラマを観て、自分の気持ちを代弁してくれたとすかっとした気分の産婦人科医もいれば、耳が痛い産婦人科医もいると思います。
また、何よりも、産婦人科医の声に耳を傾ける院長ばかりではありません。あのドラマの、決定的に都合がいいのは、院長が産婦人科に理解を示していることです。あんな素敵な院長さんがいる病院なら、もっと頑張ってしまうと思います。
by haru (2016-02-07 10:01) 

菜の花

はる先生はじめまして。
京都市内の22週の35才以上経妊婦です。
20週の時に、子宮頚管が、27ミリとなり、切迫流産でA病院で点滴入院しました。一週間で退院したのですが、自宅安静しながら今不安でしょうがありません。
NICUが病院にないことと、入院した病院の対応が、事務的で精神的につかれてしまったことが、原因です。総合病院に転院を考えています。はる先生のような温かい先生がいる病院をさがしています。先生は、どちらで開業されていますか?以前お務めの病院をよければ、教えていただけませんか。○区だけでも、かまいません。私は、関西出身ではなくて病院がどこが、よいのかわかりません(>_<)

by 菜の花 (2016-02-15 11:12) 

emi

ハル先生、初めまして。ハル先生のブログ、何回も何回も読んでます。
妊娠中は元気で産まれてきてくれることしか考えてなかったのに、子供が成長するにつれて、子供にいろいろ求めてしまう…そんな自分の気持ちを見つめ直したい時にハル先生のブログを読んでいます。
年明けに大病院で子宮筋腫の為、子宮摘出手術をしました。 その大病院で2009年に下の子を出産してます。ハル先生のブログを読んでいて、もしやもしやその大病院がハル先生のいた病院ではないかな~と思っています。見事にハル先生と入れ違いですが…(>_<)(お会いしたかったです)
手術時の主治医の先生は、30歳くらいでくせ毛で背の高い小麦色の 先生でした。(分かりますか?)口数は少ないですが、きちんと目をしっかりみて話してくれる礼儀正しい優しい先生でした。
ハル先生のブログを読んでいたので
産婦人科の先生のお忙しさは感じていたので、毎日様子を見に来てくれる主治医の先生をとても有り難く感じました。
ハル先生にお聞きしたいのが、卵巣のことです。子宮がん検診は不要になりましたが、卵巣はどうしたら良いか悩んでいます。。卵巣はやはり年に一回は見てもらった方が良いのでしょうか?卵巣がんの検診としては、見つかった時にはもう進行していると聞くので、年に一回では意味がないと聞きます。大病院で
子宮摘出後の卵巣のチェックに来られる方はおられましたか?卵巣に関してのハル先生のご意見がお聞きしたいです。
by emi (2016-02-16 20:06) 

haru

菜の花さん、コメントありがとうございました。
あなたがすでにボクのクリニックに受診されていることはお気づきでしょうか?いろいろ悩まれていることも十分理解しました。
ゆっくり時間をかけてお話しできたのでよかったです。
頑張りましょう。
by haru (2016-02-23 22:14) 

haru

emiさん、コメントありがとうございます。
たしかに入れ違いでしたね。担当の先生は、きわめて優秀な先生で、褒めてもらうと自分までうれしくなります。
卵巣のチェックは必要です。大病院でも、年に一人くらいは、子宮全摘後で、検診にいかなかったために治療の時期を逸してしまった方がいらっしゃいます。
1年に一度で十分です。受診してください。
(ボクのクリニックでも卵巣の検診はできます。主治医の先生と相談してください。笑)
by haru (2016-02-23 23:27) 

emi

ハル先生、お忙しい中お返事ありがとうございます。以前、大病院の医師紹介の写真でハル先生のお顔を見たことがあります。眼力がすごくて怖い先生かと思ってしまってました。(ごめんなさい)
卵巣チェックのこと、ありがとうございます。主治医の先生にも言われた気がします…診察室で先生や看護師さん、三人の視線を浴びて真っ白になってました。
はい、主治医の先生は優秀な方だと思います。ご本人の努力はもちろん、ハル先生のご指導もあったのではないでしょうか?今でも十分優しい先生ですが、5年後、10年後、ハル先生のように患者さんの気持ちを受け止め、寄り添えることが出来る先生になられることを願っています。
私は大病院近くに住んでいるので、ハル先生のクリニックが通える距離に出来て心強いです。今後、お世話になると思います。宜しくお願いします。
by emi (2016-02-24 19:41) 

もりみつ

ハルさま

初めてのメールを
させて頂きます。
私、システムエンジニア(SE)志望の
就職活動生の、もりみつと申します。

「不妊治療の精度の向上に、システムの力は有益でしょうか?」ということを伺いたくて、
今回コメントをさせて頂きました。

日々、周りでも、新聞記事でも
不妊治療を行っても、”すぐ結果が出る夫婦””すぐ結果の出ない夫婦”が存在します。
その差の本質的な原因の1つは「治療を、各医師の考えや勘に依存し過ぎている」だと考えます。

そこで、不妊治療の事例のビッグデータ(各病院のビックデータのみならず、全国の病院のデータ)を集めて、分析できるシステム(ソリューション)が完成したら、もっと精度の高い不妊治療を提供できるのでないか?と考えた次第です。

そこで、ハルさまに以下4つの質問をさせてください。
1.実際の不妊治療は、現場の医師の実力・経験に依存しているとお考えでしょうか?
2.上記のようなシステムはすでに存在しますでしょうか?
3.上記のシステムが完成したら、医師側の負担は減らすことが出来、もっと精度の高い治療は可能になるとお考えになりますか?
4.上記のシステムが完成の課題・障害は何だとお考えでしょうか?

本当にお忙しいなか
失礼いたします。
お返事お待ち申し上げます。

もりみつ


追伸
実は、祖父も医師で、いつも、その背中に憧れていました。生命の最前線で戦っているハルさまのような方のブログに出会えて嬉しいです。
by もりみつ (2016-06-29 16:19) 

haru

もりみつさん、コメントありがとうございます。
不妊治療のアウトカムは、非常にわかりやすく、妊娠が成立するということです。
なので、治療成績も数字で表現することができます。なので、妊娠の効率を上げる治療法を突き詰めるとみな同じようになると思います。ただ、不妊治療には段階があって、最初から体外受精をするわけではなく、まずは体調管理から勧める先生もおられます。患者さんのメンタル面を大切にして、まずはできるだけナチュラルな妊娠を試す場合も多いです。
確かに多くの産婦人科医は、自分の経験に頼る部分が多いと思います。そういう「経験」は、微妙な変化となり、時として患者さんに、安心や不安を与えます。
不妊治療のシステムが完全なものであれば、産婦人科医も患者さんの不安を感じ取ることが不要となり、ある意味、「このプロトコルで妊娠しなければ、残念ですが、あなたが悪い。」と言ってしまうかもしれません。不妊治療を専門とする産婦人科医は、妊娠が成立した時、一緒に喜び、責任を持って、また、周産期を専門とする産婦人科医へ連携するのです。(両方やってる先生も多いですが)
医療の質のばらつきを無くすために、システムを成熟させることは重要だと思います。
ただ、そこに、産婦人科医と不妊で悩むご夫婦との信頼関係があることを忘れてはならないと思います。何故なら、不妊治療のストレスは計り知れないからです。
こういったシステムを構築する際に忘れてはならないのは、何よりもメンタルな部分への配慮だと思います。
by haru (2016-08-11 18:25) 

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