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病院の先生はみんな優しかった [妊娠]

うちの病院では、周産期カンファレンスとして、
産婦人科医と小児科医、助産師、NICUのナース、
そして、ケースワーカーが
毎週カンファレンスをおこなっています。
そこでは、
それぞれが担当しているハイリスクの妊婦さんをプレゼンしたり、
助産師さんが、それぞれ外来で面接して、その産婦さんの家族背景や心配事を聞くなかで、
問題がありそうな産婦さんについて報告したりしています。
実際、分娩はいつおこるか予想できないので、
早い週数から、いろんな情報を共有しておくことが大切です。
リスクは、医学的なものだけに限らず、
社会的なリスクについてにも目を向けています。

そんな中で、「有名人」の妊婦さんがいました。

年齢こそ、そこそこ重ねているのですが、
いわゆる、今時の若者です。

ほとんど、自分のペースでしか妊婦健診を受けません。
予約をとっても平気でキャンセル。
お腹が痛いと、突然、救急受診してきます。
「一応」外来担当医はいるのですが、
実際には、ほとんどその先生の曜日には来ません。

ある夜、「破水したかも?」って電話がありました。
妊娠8ヶ月目だったので、当直の先生が、
すぐに受診するように指示したにも関わらず、
来院したのは明け方。
どうやら友達と遊びに行っていたそうです。
結局は大丈夫でしたが、
その夜の当直の先生もキレそうになったそうです。

陣痛が始まると、
連絡がくるのは、なぜか「友達」経由でした。
本人でもなく、お母さんでもありません。
強いのか、弱いのか、破水はないか、
さすがに、友達経由では陣痛の様子もわからないので、
連絡をうけた助産師さんも困っていました。
そもそも、こちらからこの産婦さんに電話をかけても、
着信拒否なのか、全くつながりません。

 「痛くなったら、自分から来るやろ。」
当直だったボクは、友達の名前と連絡先くらいは聞いておくようにと、
助産師さんに指示しました。

日曜日の当直でした。
朝の「陣痛開始」の噂から半日がたち、日付が変わる前に、
いよいよ陣痛が強くなり、彼女は登場(入院)しました。
その「有名人」の産婦さんとボクは初対面でした。

たしかに今時のお嬢さんですが、
ボクが想像していたより、落ちついているようにも見えました。

日付が変わって、
明け方にお産にありました。

お産が終わって、処置をしながら、
しばらくトークタイムです。

 「なんで、陣痛がはじまったときに、電話してきたのが友達やったんですか?」
「痛くなってきて、友達にメールしたら、『そんなんほっといたらアカンやろ。私が連絡してあげる。』って、友達が病院に電話してくれたんです。」
 「えらいやさしい友達やね。」(京都風のイヤミです)
「そうなんです。あの子も、ここ(うちの病院)で産んでいて、『まかせとき!』って、電話してくれたんです。」
 「状況がつかめないから、助産師さんが困ってたんですよ。今度からは、自分でちゃんと電話してきてね。」
みんなが困っていたと伝えました。
最後に、妊婦健診がとびとびになっていたことについて、
いろんな事情はあったかもしれないけれど、
けっして褒められたものではなかった、と諭しました。

みんなが、あなたのことを心配していたので、
おかげで、今日、あなたとは初対面の気がしない、と付け加えました。

処置が終わって、お疲れさまと声をかけたとき、

「この病院の先生、みんな優しかったぁ。」
 「そう思ってくれるんやったら、今度もし、妊娠することがあったら、ちゃんと約束を守ってくださいね。」
さすがのボクも、当直の明け方のせいか、しんどくなりました。
ボクたち、スタッフが優しかったのは、
決して、この産婦さんに対してではありません。
みんな、お腹の赤ちゃんのことを一番に心配していたんです。

受診態度が悪い、と叱りつけでもして、
それが原因で、もっと病院に来なくなったら、もっと困る、と
思っていただけなんです。
陣痛がきて、自分で電話しないことで、
なにか不都合なことが起きても、
こちらから連絡がつかない状況で、
病院の外で起こったことは、
ある意味、自己責任なんです。

でも、どんなときも、
一番つらい思いをするのは、
一番弱い立場のものです。

この産婦さんが感じた、友達やボクたち病院スタッフの優しさの意味を
育児を通し、いろんなことを経験して、
少しずつでも理解して欲しいと願うばかりです。

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ゆう

赤ちゃんが無事に産まれてくれて良かったという気持ちと、これから母親にたくさん愛情をそそがれながら育ってくれるだろうかという心配、胸騒ぎと両方感じる記事でした。言いたいことも言えず抵抗もできない、小さな小さな赤ちゃん。お母さんのあったかい胸に抱かれて、安心して眠れていますように。
by ゆう (2015-02-07 18:40) 

haru

ゆうさん、コメントありがとうございます。
本当に大丈夫なのかな、って心配しましたが、少なくとも、周囲とのコミュニケーションがとれている方なので、若さで乗り切って欲しいと思います。
まだまだ、人間的に未熟な部分があったとしても、子育てを通じて、いろんな事を身につけたり、学んだりしていけばいいのではないでしょうか?

by haru (2015-02-22 19:49) 

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