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働き方改革は素晴らしい [産婦人科医]

気が付いたら、
最後にこのブログを更新してから半年が経過していました。
ゴールデンウィークは、いま取り組んでいるレーザー治療の研修として、
イタリアに行ってきました。
1週間ほどの日程の中で、
先駆者として数多くの論文を発表し、実際に日本でもレクチャーを受けたこともある先生の、貴重な勉強会や、実際にレーザーを組み立てている工場見学など盛りだくさんでした。
合間に、レオナルドダヴィンチの「最後の晩餐」やウフィツィ美術館を見て回り、
ヴェネチアでゴンドラにも乗り、
研修以外にも有意義な旅となりました。
20年ぶりに訪れたイタリアは、何もかもまったく変わっていませんでした。

また、その1週間後に日本産科婦人科学会が仙台であり、
最近取り組んでいる、同じ診療内容で、ランチョンセミナーをさせてもらいました。

移動距離はざっと、12,000キロくらいでしょうか?
さすがにくたびれました。

周産期医療の最前線で、頑張っていたころには考えられないことです。
産婦人科医不足で、ぼくが「頑張っていた」ころは、
ぼくは、1年もうち、6日間しか京都市から出ることができなかったことがあります。
そして、京都市の、丸太町通より南に行くことも、年に2、3回でした。
たまに、京都駅周辺に会議で出かけるときは、うれしくて、「お土産」に?、
ソフマップでパソコンを買ったりしました。
また、5年に一度の専門医の更新に必要な、学会のポイントがギリギリ足りなくて、
慌てて、近場の研究会に出席しまくったのを覚えています。

医会の理事になり、
そういう仕事が増えてくると、
大学の知り合いの先生が、「珍しいですね、病院、今日は落ち着いてるんですか?」
などと、よく声をかけてくれました。

あの頃のボクは、
常に患者さんに張り付いて、どんな時も、最短の時間で駆けつけることで、
お母さんや小さな命をずっと守り続けていました。

でも、ああいう診療体制は、もうやってはいけません。
「働き方改革」
素晴らしい言葉です。

働き方改革に必要なものは、
第一に、チームの存在でしょう。
そして、
そのチームには、クオリティの均一化が必要です。
ドクターによって、診療スタイルが変化することはあっても、
診療のクオリティがばらついてはいけないのです。
そのために、
教育や研修、ガイドラインの充実が必要となります。
どんなときも、患者さんにとって、均一でハイレベルな医療が提供されるべきなのです。

10年ほど前にボクがやっていた診療スタイルは、
今の、働き方の感覚でいうと、
完全に「アウト」でしょう。

結果、
たくさんの、大切な小さな命やお母さんを助けることができましたが、
一方で、
大切な家族がしんどくなりました。

あと、10年早く、
働き方改革が始まっていたら、
どうなっていたんだろう?

幸いにも、
しんどくなっていた次男は、
なんとか元気を出して、
数か月前から学校に通い始めてくれています。
今のところ、
遅れていた勉強を取り戻すために、
へこたれずに頑張っています。

「頑張りすぎるなよ。」

イタリアにも、仙台にも、
たくさんの問題集や宿題(と、少しの漫画)をリュックに詰めて、
ニコニコとボクの旅行に付き合ってくれた次男は、
この5月だけでも、ひと回りも、ふた回りも、成長したように思います。
何度も、彼の笑顔を見ることができて、本当によかったです。

頑張りすぎず、頑張っちゃえる生き方、
そういう余裕のある状態でなければ、
笑顔が生まれてきません。

これからも、たくさんの笑顔に出会えるように、
まだまだ前に向かって、進んでいきたいです。


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いつもとは違うクリスマス [妊娠]

メリークリスマス!
声を大にして、そう叫んできました。
大人たちの愛と希望に包まれながら、
すべての子供たちが、朝目覚めると、
姿が見えないサンタクロースからのプレゼントに、にやけてしまう。
ボクが思う、クリスマスの朝。

でも、今年のクリスマスは少し違いました。

中学生の息子は、
サンタクロースについに手紙を書かなくなり、
それはそれで仕方がないだろうと、ボクはボクで、
彼にプレゼントをすることにしました。
それなりに喜んでくれて、毎日使ってくれています。
 「よかった、よかった。」
でも、手紙を書かなくなった理由は、欲しいものがないからだといいます。
これまで、サンタには、親にはお願いできない、無茶ぶりといってもいいようなプレゼントを手紙に書いていましたが、そういった「わがまま」を楽しくなくなったようです。
なんとなく、寂しく感じましたが、
クリスマスに賞味期限があるとしたら、こんな感じの終わり方なんでしょうね。

そしてもうひとつ。
クリスマスの日に、中絶手術を受けた患者さんがいました。
その患者さんが、麻酔の時に、泣きながら言った一言が、
あまりにつらくて、切なくなりました。
(もちろん、内容はここでは書けません。)

この若い患者さんが、いつか、子供をもって、
同じように、プレゼントをもらった我が子の笑顔を見て、
幸せな気持ちなりますように。

あんな気持ち、こんな気持ち、
すべてひっくるめて、
メリークリスマス!

産婦人科医として、
一人の親として、
人間として、
まだまだ、ボクの修業は続いています。

皆さん、佳いお年お迎えください。

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やっと人生の半分 [産婦人科医]

今月末、ボクは誕生日を迎え、ようやく、人生のちょうど半分を、医師として、産婦人科医として過ごしてきたことになります。
ボクが医師になった当時は、国家試験が4月にあり、合格発表が5月の後半だったため、6月1日付の就職でした。浪人している関係で、やっと今になって、人生の半分に到達したわけです。
産婦人科医になって、女性のキモチをいつも考え、いわゆる女心の複雑さをいつも感じてきました。
(時には、しんどいなと思うこともありました。)
たとえば、
妊娠した分かった時の女性の表情は、本当に複雑です。
やったー!と、ガッツポーズで
幸せを感じている女性ばかりではありません。
今は産めない、産みたくない、産ませてもらえない、
産んでいいと言ってもらえないかもしれない、
産むのが怖い、もしかしたら遺伝的に何か異常があるかもしれない、
誰の子かわからない、
絶対パートナーとの子でない、
どうしたらいいのかわからない、などなど。

とくに開業してからは、こういった悩みを毎日受け止めています。

(大きな病院で産科外来を担当していたころは、産むと決めている女性がほとんどでした。
産むと決めた後に、いろんな不安があって、大きな病院へやってくるのです。)

閉経を迎えた女性のキモチも様々です。
月経痛で苦しんできた方、ずっと妊娠を待ち望んでいた方、
閉経を受け入れるキモチも、本当に様々です。

そして、自分がオトコなのか、オンナなのか(いやいや、もちろんオトコですが)、わからなくなる瞬間さえあります。

ただ、開業して、妊娠という大問題に直面した、若い女性に接する機会も多くなって、自分で気づいたことがあります。

それは、
「こういう時、きっとオトコはこう思っている。」
と感じることです。

ボクのクリニックに来て、どうしようか悩んでいるとき、パートナーの男性が一緒であることは少数派です。彼女らは、自分自身でもちろん考えているのですが、一方で、パートナーである男性が何を考えてるかわからないと悩んでいるようです。
彼女ら、それぞれが抱えているいろんな状況や問題をひとつひとつ聞いていくうちに、
「多分、カレシは今こう考えているのかもしれない。だから、カレシには、こう声をかけてみたらいいかもしれないね。」
などと、会話の中から、男性のキャラの自分がいることに気づくのです。
そして、話していくうちに、彼女らは、気分がずいぶん楽になったように思えます。
妊娠は、彼女らにとって、最大のピンチかもしれませんが、
人間として、自分のみならず、パートナーにとっても、
大きく成長するきっかけになると信じています。

彼女らは、女性である自分を、女性のキモチがわかる人に共感してもらい、女性としてのアドバイスが欲しいと思う一方で、
パートナーのキモチがわからず、不安に思い、パートナーの理解できない言動、つまり、オトコのキモチを解説してほしいと願っていることに気づくようになりました。
世の中で、オネエと呼ばれている男性が、男性からも女性からも受け入れられているのは、きっとそういうオールマイティさが求められているからなのではないでしょうか?
(それ以外に、性的マイノリティゆえの寛容さもあると思います)

長い人生の半分もかけて、ようやく気付いたことが、たったこれだけなのか?と悲しく思う瞬間もありますが、ボクにとっては、この時間は欠かすことができない時間だったと思っています。

産婦人科医であることが人生の3分の2を占めるまでには26年以上かかりますが、
80歳で見えてくる新しい次元の世界があるとしたら、
残りの人生がすごく楽しみになってきました。

開業して「毎年、自分の誕生日に、お産に立ち会う」という、ボクの楽しみはなくなってしまいましたが、今思うと、それが最高の贅沢であった気づかされます。

10年後、いやいや、20年後の自分をイメージして
まだまだ、ボクの修業は続きます。

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線香花火 [子育て]

中学生の次男が学校に行かなくなって、
もうずいぶん時間が経ち、5回目の夏休みが来ました。

「長い長い夏休みやな。」と、無理せずに、
精神的にもストレスがないように穏やかに過ごす毎日です。

そんな彼が、昨日の昼間、
「花火したい。」
と言い出しました。
何年か前にもらった、子供用の花火のセットを出してきて、
今すぐやりたいと言うのです。
「明るいときにどんなふうに見えるか、見たいねん。」
 「なるほど、面白そう!」

彼が大好きな線香花火に、火をつけます。
水を張った小さなバケツの中で、
線香花火は、音を立てて、小さく、しかし、力強く、燃えていき、
最後は、ぽちょんと、水の中に落ちていきます。

パチパチという火花は、暗い夜ならどうなるだろうか、と想像を膨らませます。
煙の多さと、最後のぽちょんの音が面白くて、楽しかったです。
何本かして、納得した彼は、
「残りは夜に。」
と片付けます。

晩ご飯が終わって、ほっこりしていたら、
「さぁ、花火するで。」
と、虫よけスプレーを自分で吹き付け、準備を始めました。
ろうそくに火をつけて、
大きめの花火から順番に楽しみました。
そして、
やはり最後は、線香花火です。
一本あたり、数十秒くらいの線香花火ですが、
不思議なことに、毎回、火花の出かたが違うのです。
先にぶら下がる、赤い玉の大きさも形も少しずつ違うのです。
何本やっても、飽きることがありません。

そして、
パチパチとはじける火花を二人で見ながら、
あとボクは、何度、この線香花火を、次男と楽しむのかな、と
しみじみ思いました。

彼の、この長い夏休みが終わってしまうとしたら、
もちろん、
ボクは、それを望んでいるし、願っているのだけれども、
彼が、大人になって、
いつか、線香花火に興味がなくなってしまうかもしれないと思うと、
切ない気持ちになりました。

「残りは、お兄ちゃんが帰ってきたときに一緒にやるわ。」
と、彼は、線香花火を5本ばかり残して片付けました。
再来週、長男が、夏休みで下宿先から帰ってくるのを楽しみにしています。

夏だろうが、冬だろうが、
昼間だろうが、夜だろうが、
線香花火は、いつも同じじゃなくて、面白くて、きれいで、切ない。
みんなが思う線香花火は、夏の夜の美しさをいうのでしょうが、
それは、昼間のもうもうと煙を上げて、
小さいけど力強く、燃え盛る線香花火を知らないだけじゃないか。
明るいときにこそ、暗くなった夜の線香花火の美しさを想うことができるのじゃないか。
そして、
明るいからこそ、パチパチとはじける光の線を追うのじゃなくて、
ぽちょん、という、最後の音が聞こえてきたんじゃないか。

子育ても、面白くて、楽しくて、切ない。
うまくできている自信もありませんが、
さほど失敗したとも思っていません。
それに、答えは一つとは限りません。

次男が、笑顔でいてくれて、何よりも、健康でいてくれることに、
日々、感謝しています。
家族を思う気持ちを、優しく、わかりやすく、
教えてくれて、ありがとう。

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医師として、気持ちを引き締める日 [産婦人科医]

6月1日は、20数年前に、ボクが医師として、産婦人科医として、社会人として歩き始めた日です。
昔は、国家試験は4月にあり、結果発表が5月だったので、働き始めるのが6月1日になったという訳です。
研修医として最初にオリエンテーションを担当してくれた先生は、当時の病棟副医長でした。その先生とは長い付き合いで、結局、ボクが開業する前に勤めていた病院での上司でもありました。

自分が開業するときも、一番心配をかけて、一番迷惑をかけた先生です。

辛口な時もありましたが、どんな時も、いつもボクの味方でいてくれた大切な恩師です。
開業前に、自分が開業することを決心した時には、息子のことも一緒に心配してくれて、自分にできることがあれば遠慮しないようにと言ったうえで、「頭を冷やしてもう一回考えてみなさい。」と諭してくれました。
しばらく時間をおいて、もう一度、退職して開業する決心が変わらないことを告げに行ったときは、開業して一日何人くらい診察したら採算がとれるんだろうって、真剣に計算してくれました。

開業の時は、先生は、素敵な観葉植物をお祝いにくれました。
胡蝶蘭が多い中、いつまでも枯れない観葉植物という選択は、その先生の人柄そのものだと思いました。

ボクのクリニックは、開業当時にいただいた観葉植物がいくつかあり、どれも大切にしていますが、
先生からいただいた観葉植物は、診察室で患者さんと向かい合ったときに、ボクの左後ろで、ボクを指導しているような位置関係に置いてあります。

自分がつねに、患者さんに向かい合い、そして、ときに寄り添い、信念と希望と愛情をもって医療を続けることができるのは、いつも自分が理想としている医師の姿があり、その姿に見守られてきたからです。そして、今も毎日、見守られています。

何年たっても、追いつけない、追い越せない、自分にとって大きな存在。
少しでも、近づくことはできるのでしょうか?

まだまだ、修業は続きます。

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超音波の写真 [妊娠]

ボクのクリニックは、街中にあります。
以前勤務していた病院と、その前に勤務していた病院のちょうど中間です。
ボクが今まで担当していた患者さんたちが通いやすいように、
いくつかの交通機関で繋がっている場所を選びました。
そういうクリニックならではというわけではないのですが、
若い患者さんが、「月経が遅れている。」という理由で受診されます。
独身で、一人暮らしで、多くは学生さんです。

「おしっこの検査(妊娠反応)で陽性がでました。」

明らかに嬉しい笑顔で話している方と、
あきらかにその真逆の表情を浮かべている方と、
長年産婦人科医として働いていると、
その方の、次の言葉は想定することができます。

いくつかの質問をして、
これから行う診察の内容と、
予想される診察所見などを手短かに説明します。
あれこれ説明しても、きっと頭には入って行かないでしょう。
続きは超音波で診察しながらにします。

時期によってももちろん見え方は違うのですが、
正常な妊娠初期であれば、超音波検査で、
子宮の中に小さな袋(胎嚢)があります。

 「妊娠ですね。現在のところ、計算した妊娠週数からみて、正常の妊娠です。」

多くはカーテン越しなので、
顔は見えません。
でも、
超音波装置のモニターに映る、
小さな命の姿に、
短い、ため息が聞こえてきます。

この瞬間まで、
生きた心地がしなかったのでしょう。
そして、
そのため息は、
悲しいため息なのか、嬉しいため息なのか、
一言では表現できない、複雑なものです。
そのため息は、
一つの決心の瞬間でもあります。
短くて、長い、診察時間です。

ボクは、
超音波装置の画像を止め、写真をプリントします。
白黒の小さな写真です。

内診を終えて、
もう一度、写真を見せながら、
診察室でお話をします。
内診台では緊張して、説明をあまり覚えていない方もあります。
診断されたばかりなので、
これから考えて、相談して、どうするか決めることになるのでしょう。
もちろん、最初から、
中絶することを決めた上で受診している方もあります。

診察の最後に、超音波の写真を差し出します。
帰って、パートナーや家族に説明するときに必要になるからです。
ただ、その写真を受け取るときに戸惑いを見せる方もあります。

 「この写真、どうしましょう?」
「・・・。」
 「ボクが預かっておきましょうか?」
「はい。ここで、預かってもらっていて、いいですか?」

自分の人生や、パートナーの人生など、
いろんなことを考えた結果の決心でしょう。
その決心を、だれも責めることはできません。

 「わかりました。」

ボクは、超音波の写真を、
診察室の机の、患者さんから一番遠い、反対側の端に、
置き換えます。
そして、患者さんと向かい合って、
もう一度、話をします。

 「あなたの決心は、考え抜いた結果でしょうから、それで間違ってはいないでしょう。」
 「でも、今日の診察で、もし、違う決心になったとしたら、教えて下さい。」

診察が終わって、
一番反対側に置いた写真は、
ボクの診察机の引出しの中に移します。

少しずつ増えていく超音波の写真は、
ボクの、今の、命の現場です。


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10年経ちました [産婦人科医]

このブログを始めて、ちょうど10年が経ちました。

その頃のボクは、
いつも何かと戦っており、
何かに憤り、何かを威嚇し、何かを叫んでいました。

「小さな、新しい命を守る」という、大義名分のもとで。

しかし、
そうして、ボクは、
何を得たのでしょう。

たしかに、日々の喜びがありました。
元気な赤ちゃんの産声だったり、ほっとしたお母さんの笑顔だったり。

今でも、元気に、無事に育った姿を見せに、
産まれるときにボクが立ち会った子どもたちがクリニックを訪ねてくれています。
これほど、幸せな瞬間はありません。

でも、そうやって、ボクが何かと戦ってきたことで、
怯えたり、傷ついたりした人たちもたくさんいたと思うと、
本当に申し訳ない気持ちになります。
 ・・・ごめんなさい。

今のぼくは、
もう憤らないし、威嚇もしないし、叫びません。
なぜなら、その必要がないからです。
たまに、歯がゆい気持ちになることはありますが、
ボクがニコニコしているほうが、みんながハッピーになります。

今、ボクには、
児童虐待未然防止(妊娠期からの虐待対策)や、
望まない妊娠をゼロにする(若年妊娠をどうするか)、
そして、少子化対策(適切な年齢で妊娠・出産)など、
産婦人科医ができる大切な仕事がいくつかあり、
その一つ一つを、大切に続けています。

今日も、ボクが帝王切開で取り上げた子どもが、
お母さんの検診に連れられて、
クリニックに来てくれました。
診察が終わって帰るときに、
「ありがとう!」って、
お母さんの代わりにハイタッチしてくれました。

きっと、君も、明日の朝、
サンタさんからのプレゼントを受け取って、
きらきらした最高の笑顔を見せてくれるんだろうね。

明日の朝、
自分の枕元に、
なぁんにも届いていなくても、
きっとボクは、ニヤニヤしながら目覚めるでしょう。

子どもたちの最高の笑顔と、
そして、
その笑顔をプレゼントしてもらった大人たちの微笑みとを
想いながら。

メリークリスマス!

産婦人科医は、今も頑張っています。


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順調ですか? [産婦人科医]

前の病院を退職して、
今月末で丸一年になります。
あっという間でした。
ちょうど一年前は、開業準備と日々の業務をダブルでこなしてたので、
睡眠時間は3~4時間でした。
よく身体が無事だったなと思います。

開業当時は、患者さんも少なくて、
これまで勤務していた時の患者さんが受診に来てくれていたので助かりました。

受診してくれた患者さんが、
「ここって、先生一人なんですか?」
 「そうなんです。」
「じゃあ、いつ来ても、先生が診察してくれるんですか?」
 「そういうことになりますね。」
「待ち時間もないし、いつ来ても先生だなんて、オトクじゃないですか?!」
 「そう、いつでも大売出し中ですよ。」
 「わはは。」
 
まだまだ、黒字ベースは程遠いですが、
少しずつですが患者さんも増えてきて、
奥さんの援助もあって、なんとか生活できています。

何かと忙しいですが、少なくとも毎日、ニコニコして働いています。

先日、学会に出かけて、久しぶりに会う先生方、何人かと話すことがありました。
みなさん、口を揃えたかのように、

「どうですか?順調ですか?」
と訊いていただきます。
「儲かりまっか?」
という意味です。

 「いやいや、まだまだヒマヒマです。」
 「今の、3倍くらい、まだまだ余裕で働けるくらいです。」

「またまたぁ、めっちゃ稼いでるんでしょう?」

 「そのつもりでしたが、なかなかうまくいかんもんです。」
 「でもね、」
 「毎日、ストレスなくて。」
 「何よりも、それが一番よかったんです。」

「そうでしょう。先生の顔見たら、わかりますよ。」
「前よりも、もっと優しい顔になってますよ。」

ある、大学で研究されている先生が別れ際にそういってくれました。

 「そうですか~?わはは。」

前の病院を辞めてしまい、
多くのみなさんに、たくさんご迷惑をおかけしたことは
申し訳ないと思っています。
でも、そのおかげで、
ボクは、今、毎日、ニコニコしていて、
目の前の患者さんを前より優しい笑顔で診察することができています。

そして、また、新しくやるべきことも、いくつも出てきています。

それは、これから生まれてくる、新しい命と、お母さんを大切に、守っていくことです。
大きな病院でなくても、できることはたくさんあります。

まだまだ、産婦人科医は頑張っています。

「順調ですか?」

 「はい、順調ですとも。」

一人の産婦人科医として、そう笑顔で答えることができる日は、そう遠くないと信じています。


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コウノドリ効果 [妊娠]

少し前の話になりますが、
ドラマ「コウノドリ」を観た方も多いと思います。
たしかに、リアルでした。
ボクたち産婦人科医が、お産の最前線で経験する、いろんなことを
実にわかりやすく、スマートに伝えています。
ボクら、いわばプロが観ても、
「うん、うん、あるある。」
と、納得してしまうことばかりでした。
実際に経験したことがあるだけに、
思い出して、怖くなって、
ついウルウルしてしまうシーンもありました。

その中で、常位胎盤早期剥離の妊婦さんのシーンがありました。
タバコをふかしている最中に、突然発症するくだりです。

ボクは、昔働いていた病院では、
月に1回のペースでしたが、土曜日の母親教室に参加して、
レクチャーをしていました。
その病院の母親教室は、妊娠中期と妊娠後期に1回ずつ、
計2回受けることになっていました。

ボクは、たいてい後期の教室だったので、おもに、妊娠32週以降の妊婦さんが対象になっていました。
ボクの話す内容は、いつも内容が決まっていて、
例えば、3人お産した人なら、3回とも母親教室に参加したとしたら、3回同じ内容の話を聞くことになります。
どんな内容かというと、
一つは、陣痛とは?という内容、続いて、常位胎盤早期剥離(早剥)についてでした。

まず、正常の陣痛の特徴について説明します。
内容は、陣痛の「陣」の漢字の意味からはじまるものでした。
(そのあたりは、長いので省略します)
そして、
早剥について話します。
早剥は、病院で起こる場合よりも、
自宅などの病院外で起こるものの方が深刻です。
早剥はほとんどが痛みを伴うものなので、
陣痛と混同されることも少なくありません。
早剥を自分でイメージするためには、
陣痛そのもののイメージが大切です。
そういった内容を順番に話していきました。
だいたい持ち時間が20分程度だったんですが、
いつもその倍以上の時間をかけてしまい、
夏の暑い時期には、気分が悪くなって途中退出される方も
いらっしゃいました。
皆さんにご迷惑をおかけして、
申し訳ありませんでした。

それでも、こういった「生々しい」話は、役に立つこともあったと確信しています。

もう15年以上も前のことですが、
ある朝、8時45分くらいに、ある妊婦さんが救急車で運ばれてくるという連絡が入りました。
突然のことなのでびっくりしましたが、
外来で診察したら、妊娠34週の妊婦さんが、お腹を抑えながら苦しんでいます。
ばしゃばしゃと羊水が混じったような出血が服を通して流れています。
 「早剥や。すぐに、カイザー(帝王切開)!」
15分後に生まれた赤ちゃんは、少し小さめでしたが、
元気に産声を上げ、幸いにも無事でした。

手術の後で、話していると、
言葉少ないその方は、ひとこと、
「母親教室で、先生がお話しししていたのを聞いていたので、
すぐに判りました。自分で救急車を呼んだんです。」
と話してくれました。

また、ヘビースモーカーの別の患者さんは、
同じ症状で、緊急帝王切開になったのですが、
あとで、同じママ友さんに、
「母親教室で、先生の話、聞いてへんかったんちゃう?」
と叱られたそうです。
そのママ友さんは、子供が2人で、2回とも同じ話をボクの母親教室で聞いていたそうです。

こういうことがあると、
毎月、貴重な休み時間の土曜の午後を使って
母親教室で話していたことは、
決して無駄ではなかったと思います。

そこで、
先月、前の病院でのアルバイトで、
人生最後?になるかもしれない、
当直に入った時のことです。

夕方、8時ごろでした。
一本の電話がかかってきました。
妊娠34週くらいの、若い初産婦さんからでした。

電子カルテを見ながらの、電話応対です。
カルテの記載によると、
もともとヘビースモーカーだったようですが、
妊娠してからは、どんどん減っているようでした。
そして、
「テレビを見たら怖くなった。」と、見事、
完全禁煙に成功したようです。

妊娠34週の、お腹の張りはたいてい「前駆陣痛」です。
出血していなくて、痛みの間隔がはっきり自覚できるようであれば、
たいてい大丈夫です。

 「たぶん、大丈夫だと思いますが・・。」
「いえ、どうしても不安なんで、診察お願いします。」

しばらくして、診察しましたが、
やはり、胎児も胎盤も異常なさそうです。
そして、病院に到着した時には、すでに痛みも弱まっていました。

 「よかったですね。大丈夫そうですよ。」

ほっとした様子の子の妊婦さんは、「コウノドリ」を観て、
自分がタバコを吸っていたことで、
毎日、早剥にならないかすごく心配になっていたのだそうです。

「あと少し、頑張りましょう。無事に赤ちゃんの元気な産声を聞くまでは。」

怖がらせることが、正しいとは言えませんが、
ビジュアルで伝えることのほうが、強烈で、より効果的なのかもしれません。

「コウノドリ」は、母親教室の教材としても、
これからも使用されるべきものではないかと思いました。

そしたら、ボクが10年間、ずっと話していたスピーチも不要になるでしょう。
今思うと、自分でも、よく頑張ってきたなと思います。

元気な赤ちゃんを想う気持ちを、
母親教室だけではなく、
いつまでも伝えることができたら、と願うばかりです。

まだまだ、やることはたくさんあります。

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育自休暇です [産婦人科医]

クリニックを開業して、
あっという間に2ヶ月が経ちました。
開院のときにいただいた胡蝶蘭も
少しずつ盛りをすぎてきました。
それに合わせるかのように、
患者さんが来てくれるようになり、
まあまあ忙しい日もありますが、
まだまだ力が余っています。

「どうですか? 忙しいですか?」
挨拶代わりに、多くの人に尋ねていただきます。
関西の挨拶であれば、
「儲かりまっか?」
というあたりでしょうか?
 「ぼちぼちでんな〜。」と答えたいところですが、

 「いや〜、こんなに暇でいいんでしょうか?毎日、ニコニコしている間に一日が過ぎちゃって。」

実際そういう状態なのですが、みなさん、あまり信じてくれません。
「先生のところでしたら、そのうち大忙しになりますよ。」
 「え〜、うれしいけど、逆にしんどくなりたくないですね。」

家族のこととかも考えた上での退職と開業です。
あくまでも自分のペースは崩したくありません。
そして、なにより患者さんとしっかり向かい合うためにした決断です。

かといって、
そもそもの自分のペースは、今の自分よりは少しは忙しいものです。
それに、スタッフの給料もあるし、借金も返さないといけません。
ボクのチカラはまだまだ余っています。
そして、幸いにも、息子は元気です。
なによりも、このことがありがたいです。

そんな中で、先日、昨年定年退職された先輩の先生が、
体調を崩され、前の職場に入院されました。
アルバイトのついでで申し訳なかったのですが、
お見舞いにいきました。
開業の挨拶状を送っていましたが、
その先生にお会いしたのは、先生が退職されてから初めてでした。

 「先生、大丈夫ですか?」
などと、先生の病状などについて話した後、
「あんた、開業したんやて? なにがいややってん?」

歯に衣着せぬ先生から、直球ストレートの質問が浴びせかけられます。
もちろん、付き合いの長い先生ですから、ボクのことは何でも知ってくれています。
にこにこと微笑みながら、「何でも聞いてあげるで、いいたいこというてみ。」
といわんばかりです。。

 「今流行りの、”いくじ休暇”みたいなもんです。」
 「ただし、『じ』の部分は、自分の『自』なんです。自分を、もう少し育てないといけないと思いまして。」

「またまた、うまいこというなぁ。」

  「いやいや、先生こそ、ちゃんと治して、早く復活して下さい。」

無理せんと頑張りや、と、病気で入院している人から逆に励まされました。
いつも冗談ばかりで楽しい先生です。ボクとの、冗談交じりの会話の中で、目だけはじっとコチラを見て、
優しく、そして、心で頷いてくれているようでした。


患者さんと、しっかり向かい合い、そして、寄り添うことのできるクリニックを作り上げることで、
きっと、
これからのボク自身をも、育てていくはずです。

自分が育ち、忙しくなるのであれば、
それは、最高のストーリーだと思います。

まだまだ、頑張ります。


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